居場所をください。



「いいMVになりそうだな。」


は?え、今のが?


「…貴也、今の演技だったの?」


冷めた声で美鈴が聞いてくる。


「は?いや、ちげーよ。」


素直にいっただけなのに

演技と勘違いされたくねーよ。


「俺の思惑通りに動いてくれるなんて

お前らどんだけ単純なんだよ。」


「意味わかんないんだけど。」


喜ぶ長曽我部さんに

苛立った美鈴が言った。


「だから、二人のケンカもこの仲直り劇も

全部俺が仕組んだってわけ。」


「は?」


「貴也も鈍すぎ。

高城が美鈴を抱き締めたのも

佐藤が美鈴の肩に手を回したのも

俺の指示で

あの曲をお前に聴かせたのも俺。


ま、おかげで最後の最後でいいの撮れたけど。」


「……………殴っていいですか?」


「俺を殴るなんていい度胸してんな。

しかも俺はきっちり言ったろ。

付き合うなら利用させてもらうって。」


言ったけど…やり方きたねー。

俺は長曽我部さんに動かされて

美鈴とケンカしてたのかよ…。


「長曽我部さん、大橋さんにもなんか指示した?」


美鈴が聞く。


「いや?あいつには何も。」


「…そっか。」


「……………美鈴、おこんねーの?」


「一番演技であってほしかったところは

本気だったみたいだから。」


「は?」


意味わかんねーんだけど。


「貴也が私のこと好きならそれでいーや。

着替えよ。次のMVは二人だし。」


「そうだな。」



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