居場所をください。



「今日もバイト?」


「うん、10時までね。」


そう言って私は施設を出た。

今日は14時からだから2時間早いんだけど

あそこにはいたくないから。


「美鈴ちゃん。」


……………なんでいんの。


門を出たところに、昨日の男がいた。

えーと、確かに名刺には……


「長曽我部さん…。」


長曽我部ひかる(ちょうそかべ ひかる)


「あ、読めた?」


「何か用ですか。」


「だから、スカウト。

君は俺が見つけた宝石の原石だからね。」


「だから興味ないです。」


「美鈴ちゃんはここにいたくないんでしょ?」


「……………何が言いたいんですか。」


「俺がここから連れ出してあげるよ。

どう?」


「……………。」


「それに、君がデビューすれば

見てくれるかもしれないよ?

どこかにいるかもしれない、両親が。」


「……見てくれる…。」


「お金はかからないよ。

レッスン代も事務所が持つ。

衣食住も困らない。

悪い話ではないでしょ?」


「……………本当に

テレビに出るようになるんですか。」


「もちろん。

美鈴ちゃんの頑張り次第でもあるけどね。」


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