居場所をください。



「でも、実家はお父さんがデザインしたって……

よかったの?」


「自分の家は自分で建てろって

父さん言ってたしな。

俺なんかより、他の誰かに住んでもらえる方が

あの家も幸せだろ。

まぁ解体されたら意味ねーけど。

もう俺のものじゃないから。」


「……そっか。」


「仕事は続けようって思ったけど

美鈴のところに来るかは悩んだ。」


「なんで?」


「もう待ってねーかもって思ったから。

誰も美鈴の話をしなくなったし

俺も美鈴になにも言わなかったから

なんの連絡もしなかった俺が今さら来ても

もう遅いって言われんのにビビってたっていうか

美鈴まで俺から離れていくんじゃねーかって…」


そんなこと言う貴也は

なんだかいつもと違って弱々しくて

17歳で両親を失ったかろ

きっとひとりになるのが怖かったんだろうなって

その気もちはすごくよくわかるから

私は黙って話を聞いていた。



「でも"手紙"聴いて、

あー俺、まだ忘れられてないわって思って

美鈴に会いに行こうと思ったんだけど

長曽我部さんに止められた。

今美鈴絶好調だからツアー終わるまで邪魔するなって。

だから今日来た。

今日ライブも行った。

美鈴が最後に手紙歌ってんの見て

長曽我部さんが言ってた絶好調の意味がわかったわ。」


……あの人はどこまでも人の気持ちを利用するね…。

まぁいいけどさ。



< 2,690 / 4,523 >

この作品をシェア

pagetop