居場所をください。
「………っていうか
ほんとになんで登山?」
「高い山登ると嫌なこととか
悩んでることとかどうでもよくなる。
自分がどれだけ小さいのか思い知らされる。
高ければ高いほど、どうでもよくなる。
だから富士山が今の美鈴にはいいかと思って。」
「…今の美鈴って。」
「歌詞はおりてこない
貴也は他の女にくっついてる
セリフは覚えられない
十分な悩みだろ。」
………バレてたのか。
「それに、たまに
自分の気持ちが歌詞で届いてるのか
わからなくて悩んでるだろ。
それも、登ってみたらわりと吹っ切れるよ。
こんな小さな自分にそんなことができなくて
当然なんだなって。」
「伝わらない前提じゃん、それ。」
「だからもっと気楽に考えりゃいいんだよ。
なんにも伝えることができなくて当然、
そう思えるよ。」
「………そっか。」