居場所をください。
それから車に戻って
今度こそ、貴也の地元へと向かった。
「けっこう遠いんだね。」
「だろ。
佐藤さんが送迎嫌がるのわかるだろ。」
「はは、そうだったね。
それであのマンションに越したのか。」
確かに30分くらい走ってる。
なかなか遠いね。
「まぁもうすぐつくよ。」
前に一度だけ来たけど
結局あのときは途中から見れてなかったし
初めて見る景色がなんか楽しくて
ずっと外を眺めてられる。
「ねぇねぇ、美鈴ちゃん。」
「んー?」
ぼーっと会話もなく外を眺めていると
明奈ちゃんに話しかけられた。
「美鈴ちゃんは部活とか入ってたの?」
「うん、まぁね。
っていうか強制だったし。」
「何部ー?」
「書道部。」
「しぶ!」
「書道部はお金がかからないから。
運動部もだけど吹奏楽とかもお金がかかるし
書道部なら筆は借りられるし、半紙も墨も
部費から出してくれるからさ。
部費は免除で払わなくていいし。」
「そっかぁ…
大変だったんだね。」
「んー、まぁ慣れてたけどね。
だから当時は別になんとも思ってなかったよ。」
みんながそういうことを
当たり前にやってたから。
まぁペン字とか華道部に行ったから
私だけ書道部にしたんだけど。