居場所をください。



「………まぁ家族ってものに

美鈴は人一倍憧れてるもんな。」


怒って先行く私の背中に

高橋の言葉がぶつかった。


「…………無条件で愛されるって

心地いいんだろうなって。」


今は、誰かのために頑張ることが好きだ。

でも、何にもしなくても私を愛してほしい。

なにもしたくないわけじゃない。

ありのままの私でもここにいていいんだって

安心できる場所がほしい。


「そんなの、

見つける方が大変だろ。」


私の希望は

また高橋の言葉によって砕けた。


「なんなの?さっきから。」


「人間っつーのはみんな不完全なんだよ。

だからこそ支え合って生きてくんだろ?

自分に足りないものを誰かで補う。

そんなの当たり前のことじゃねーかよ。

被害者面して甘えたって、誰も近寄ってこない。」


「そんなのわかってるわ!!」


「………みんながみんな

演じてる美鈴を好きになったんじゃない。

少なくとも俺は冷めた顔して冷めた声で

あの頃の、ありのままの姿をして

俺の前に現れた美鈴を気に入ったんだ。

あの頃から美鈴は変わったけど

どんだけ変わったって美鈴は美鈴。

根っこの部分はなにも変わってない。

だから、俺は一生お前の友達でいる気がする。

他の誰でもない、美鈴を

俺は失いたくないと思ってるよ。」


………高橋…。


「……………もう、似合ってないよ!」


「うるせーよ。

どんだけ恥ずかしいこと言わせんだよ!」


「勝手にしゃべったんじゃん。」



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