居場所をください。



こうやって目の前で

矢島くんのすごい演技力を見てると、

こっちまで役になりきらなきゃ

って思わされて、私はなんだか

矢島くんに惚れたような気分になった。


「湊………」


だから自分からのキスもあっさりとできて

たぶん、私のキスシーンの中で最も

甘いキスとなった。


「カット~!確認しまーす」


監督のその声に、一瞬で魔法が溶けたような

プツッと音がしても良いような、

そんか感じで矢島くんもすぐに私から離れた。


「よかったんじゃん?」


「ほんと?よかった。」


矢島くんの演技力が作る世界観が

貴也とか隼也と違って独特で

すごいやりやすいキスシーンだった。


「それに、五十嵐さんって

キス上手なんだねー」


「えっ、いや、別に…」


「なんか、俺が松野くんになった気分だったよ。」


なんて言ってくから、すごく恥ずかしくなって

顔を熱くしたまま矢島くんから目が離せなくなって…


「なにやってんだよ。」


いつの間にか、貴也の顔が怖くなってた。



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