居場所をください。

「……それ、嬉しいってこと?」


『いや、どちらかといえば

………なにかを諦めたような…

空笑いだったな。』


「………そ。

で、美鈴出てったわけ?」


『あぁ、逃げるようにな。

はっきり言って、泣きそうだった。

なんでもっと先に言っとかねーんだよ。

最初から決まってたことだろ。』


「………最初から言ってたら

美鈴は俺に心開いてくれなかったろ。

タイムリミットがある、なんてさ。

貴也と隼也と知り合って、

デビューして人気出て、

貴也と付き合って、もうそろそろ

ってときに貴也がいなくなって

美鈴、ずっと精神的にきつかったから。

寝れなくなるくらい。

それくらい、俺も追い詰めてたし

貴也のこともあったのに、言えるかよ。」


親に捨てられた美鈴は

誰よりも人がいなくなることに敏感なんだから。

そんなの、

貴也がいなくなったときの美鈴を見てたら

言うタイミングなんて

なかなか見つけられなかった。


『きっと美鈴はお前の口から

それを聞きたかったはずなのに。』


「それは父さんが勝手に喋ったんだろうが。」


『で、入籍することは?

もういったわけ?』


「それもこれから。

他にも仕事の話もあるし

やっとゆっくり時間もとれたし

まぁ今から全部って感じ。」


『ふーん、そ。了解。

とにかく、美鈴

すげー寂しそうな顔してたから。

なんとかしてやってくれよ。

俺にはあんな顔しねーんだから。』


「もとはといえば全部父さんが悪いんだけどな。

まぁ俺今車だし、もうすぐマンションつくから

もう切るから。

ついでに俺、明日から休みだからな。

連絡してくんなよ。」


『はいはい、わかってるわ。』


………寂しそうな顔、か…



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