居場所をください。



「美鈴ちゃんね、今きっと

一人で乗り越えようとしてるんじゃないかな。」


「……なにを?」


「ひかるくん、結婚するんでしょ?

美鈴ちゃんのマネージャーやめたら。」


「………やめたら、っていうか…」


「美鈴ちゃんはそういう言い方をしたの。

きっと今すっごい寂しいんだと思う。

ひかるくんが離れてって

松野くんには拒絶反応出ちゃって

自分でもどうすればいいかわかんないんだよ。

きっと今までならひかるくんのところに

泣きついてったと思う。

でも美鈴ちゃんには今それができない。

…………すっごい自分を責めてるの。

ひかるくんが離婚したのも自分のせいで

すぐに籍を入れないのも自分のせいで

昨日里美さんと弘希くんとの時間だったのに

それさえも邪魔したって。

昨日の覚醒剤の子のことだって

一緒に育ってきたのに

なんにも気づいてあげられなくて

結局、自分が離れたことで

寂しい思いをさせたんだって、責めてる。

物心ついた頃から一緒に育ってきた

兄妹みたいな存在なのに

なんにもわかってあげられてなかったって。

全部自分のせいだって責めてる。


本当はひかるくんに頼りたいんだよ。

でもそれじゃなにも変わらないから

今、一人で乗り越えようとしてるの。


それなのにひかるくんが迎えに来ちゃ

美鈴ちゃんの気持ち、踏みにじっちゃうでしょ?

だからさ、ひかるくんはこのまま帰ってほしいな。」


「…………俺にできることはない、ってことか…」


「そうじゃないよ。」


おばさんの言葉に

いつの間にかうつ向いていた顔が

また前を向いた。



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