居場所をください。



「飯は?どうする?」


車にのって早々、長曽我部さんは

私にそんなことを聞いた。


「貴也いるからいい。帰る。」


「………そ。」


前までの私なら間違いなく

長曽我部さんにねだって一緒にご飯いったけど

もうそんな私からは卒業だもんね。


長曽我部さんには里美さんや弘希がいて

私には貴也が入る。


いつまでも同じところに

立ち止まってはいられないから。


「…ね、弘希ってさ

私のライブ来たりしないのかな。」


「どうだろなー。」


「あ、でも年越しは里美さんと過ごすか。」


「そうだな。

事件とかなきゃそうなるだろうなー。」


「………ごめんね、長曽我部さんは仕事で。」


「は?なに言ってんだよ。

しかも俺が決めた仕事なんだから

美鈴が謝ることでもないしな。」


………まぁ、そうなんだけどさ…


「あ、そうだ。

じゃあ29、30日は弘希とどっか行ってきたら?」


「は?仕事だわ。

だいたい、30日もライブあるだろ。」


「大丈夫だよ。

マネージャー、6人もいるんでしょ?

長曽我部さんいなくてもなんとかなるよ。

それまでにちゃんとリハすれば

長曽我部さんいなくてもなんとかなるよ。

………まぁ、完成するまでは

いてもらわなきゃ困るけどさ。」


「あのな、プロデューサーは俺だぞ?

なのに俺だけ休めるかっつーの。」


「じゃあ30日のライブが始まる前まで。

ライブは20時スタート。

18時半までに来てくれれば良いよ。」


「はぁ?」


「だって、来年からは

長曽我部さんなしでやらなきゃなんだもん。

長曽我部さんがいるうちに

みんな知っといた方がいいんだよ。

長曽我部さんにどれだけ負担をかけてるか。」


きっと、みんな知らない。

どれだけ長曽我部さんが頑張ってるか。

………私ですら、わからないんだもん。


長曽我部さんがいないなんて、

不安しかない。


「いなくなってからじゃ遅いの。

………ね、だから30日の18時半まで

弘希と過ごしてきなよ。」


私が目を見てそう懇願すると

長曽我部さんは渋々首を縦に振った。



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