居場所をください。
「その時から、婚姻前の挨拶は
絶対振袖を着せたいって思ってたんだよ。
それ着て、今日来るのを期待してた。」
「…そっかぁ。
まんまと着てきちゃったよ。」
「似合ってるよ。
綺麗だ。」
「ふふ、ありがと。」
「でも普通着てくるかわかんねーのに
振袖送ったりするか?
婚姻前の挨拶なんて、来るかわかんねーのに。
美鈴に父親扱いされてないって
自覚まであるくせに。」
え、自覚あるって……
……バレてたのか…
「えっ、なんでそれを貴也が…」
「長曽我部さんと話してるのを聞いた。」
長曽我部さんと……
…そっか、だから昨日のアンコール
Tシャツじゃなくて振袖にしたのか……
長曽我部さんは貴也が私に
プロポーズすることも
それを社長が見に来てることも知ってて…
……だから、ここの合鍵も、か。
本当、つくづく親思いだね。
いちいち優しいんだから。
「……その時、長曽我部さんは
何て言ってたの?」
「子供を捨てた親が贅沢なこと言ってんな
って言って社長撃沈。」
「はは、そっかそっか。
長曽我部さんらしいね。」
……16年、離れて暮らしてて
私は今さら長曽我部さんを
お兄ちゃんとか、名前で呼ぶとか
社長をお父さんと呼ぶとか
それはさすがにできない。
……でも、長曽我部さんに感じる感情が
なんなのかはわからないけど
それと同じものが社長にあるかと聞かれれば
答えはNOだ。