居場所をください。
introductionが終わり
俺の目の前から、美鈴が登場する。
耳が痛くなるくらいの黄色い声。
この広い会場が、美鈴を呼ぶ声で包まれる。
そんな声に包まれながらスポットライトを浴び
かっこいい表情のまま力強く歌い始める美鈴。
少し前まで、ただの女子高生だった美鈴が
今はここまで大きくなった。
……そして、こんな美鈴を見ることに
俺はもう違和感を感じない。
こんな美鈴が、俺のなかではもう当たり前で
こいつは芸能人なんだって
こんなに多くの人に、愛されてるんだって
知れば知るほど、なんか寂しくなってく。
俺の方には一切目を向けない美鈴。
たまに見せる笑顔。
そこにいる美鈴は俺の知る美鈴じゃなく
ここにいる全員が知る五十嵐美鈴だった。
……こうやって、だんだん
この美鈴が当たり前になっていくのかな。
ステージに立つ美鈴でないと
美鈴に会う機会もどんどん減ってくのかな。