居場所をください。



「……なぁ、咲って結婚願望とかってあんの?」


そんなことを聞いてみると、咲は一瞬固まったけど


「あははは」


と急に笑いだした。


「なに、美鈴ちゃんになんか言われたの?」


「え、いや別に…」


「あ、それであんな考えこんでたの?
ヒロくんらしくないね。」


「……笑いすぎだっつーの。」


「ま、美鈴ちゃんが言いそうなことだけどね。
でもご心配なく。

そりゃ結婚願望はあるけど、私はまだそんなすぐに求めたりもしないし、待ってるわけじゃないよ。
それに、今ヒロくん忙しそうだしね。」


……それ、関係あんのか?
忙しさで言えば長曽我部さんのが上なのに結婚した。
美鈴ちゃんと貴也のが上なのに結婚した。

俺なんて、あの人たちに比べたら忙しくない。


だから、俺は決して仕事をいいわけにはできない。


「はい、ご飯にしよ。
考え事はやめやめ!」









結局俺は相変わらずなんにも進展しないまま
美鈴ちゃんは出産を終えた。

さすが美鈴ちゃんと貴也の子供。
新生児でもわかるくらい、かわいい顔をしてる。


松野家長男・松野朝陽。


貴也は名付けに一切口出しできずに、美鈴ちゃんが決めたとか。
朝陽には未来の希望が詰まってる。
真っ暗な夜を照らすのは朝日だけだから、とそんな意味を込めたというところがなんとも美鈴ちゃんらしい。



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