居場所をください。



「美鈴ちゃんと長曽我部さんは

恋とかそういうのよりも深い絆みたいのがあるよね。

他の誰にも入り込めないような。」


突然佐藤さんが言った。


「そうかな。」


「そうだよ。

長曽我部さんは美鈴ちゃんにだけ

すごく厳しいしね。

今までは貴也にだけ厳しかったのに。

そんだけ実力を期待してるんだろうけど

美鈴ちゃんの出てるテレビは

すごい優しい表情で見てるしね。」


優しい表情ね…。


「ってか長曽我部さんてみんなに厳しくないの?」


「そんなことないよ。」


私が佐藤さんに聞くと

咲さんが答えた。


「長曽我部さんは実力ある人にしか厳しくない。

あとやる気のある人ね。

売れて調子乗ってる人には冷たいしね。」


「貴也なんかはうちのトップなのに

いまだに自分を戒めてるしな。

ああいう努力家には長曽我部さんも厳しい。

愛の鞭だな。その分仕事も回すしな。

事務所の力で売れたのにそれで調子乗ってるやつには

長曽我部さんは仕事回さねーことが多いな。

名指しで仕事が来たらやらせるけど。


うちの事務所の権力者は長曽我部さんだし。」


「へぇ…。

あの人なにげに怖いね。」


「はは、そうだな。

でもやる気のあるやつには優しいから。

どの業界でもそうだろ。学校でも。」


「あー、そうだね。」


「ま、体重管理までされてんのは

また特別だけどな。」


「え!美鈴ちゃん、そんなとこまで

長曽我部さんの言うこと聞いてるの?」


「美鈴ちゃんは長曽我部さんに逆らったことないからな。

文句言いつつ言うこと聞いてる。」



だって見捨てられたくないもんね。



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