わたしは元婚約者の弟に恋をしました
「叔父さんとも話をしていたんだけど、これやってみない? もちろんわたしがサポートするよ」

 彼女はA4サイズの文書を机の上に置く。
 それは子供向けのおもちゃを販売する会社のマスコットキャラクターの案件だ。

 わたしは驚き、仁美を見た。
 彼女は首を縦に振った。

「でも、わたしにできるかどうか」

「ほのかは結構いいセンスしていると思うんだ。最近は技術も上がってきたし、いけると思うよ。わたしも手伝うからさ」

 仁美はわたしの背中を軽くポンと叩いた。

 ほのかという呼び方から彼女は友人としてそう思ってくれているのだろうというのがよくわかった。落ち込んでいた心が一気に明るくなった。

「やってみる」

「よかった。ならこの資料に目を通しておいて。あとラフでいいから案をいくつか出してね。店を見に行きたいなら、後で見に行こうか」

 仁美は紙の束をわたしの机の上に運んできた。

 コンセプトや、こうした色彩でといったデザインに関することは最初に仁美の渡してくれた紙に書いてあった。資料には店内の写真や、アクセス、人気商品といった様々な情報が詰め込まれていた。わたしはイメージを働かせながら、その資料を読み進めることにした。
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