ピュア・ラブ
「明日は、午前中休みなんだ、俺」

そうなのか、良かった。明日は午前中に来ればいいのだ。悟られない様にほっと息を小さく吐く。
それにしても、ことごとく私の考えていることを分かられてしまう。不思議だ。

「ありがとうございました」

それだけは言うと、私は、一礼をして、元来た通路を戻った。
薬品倉庫のドアを開け、外にでると、暑さでくらくらする。猫は暑さに強いと書いてあったが、これだけの暑さでは病気のモモは参ってしまうに違いない。

「黒川さ」

後ろにいた橘君は、私にまだ話しかける。
なんの用事があるのか知らないが、無視をするのはよくない。私は、会話をしないだけで、ちゃんと話は聞いている。
まあ、それは自分の都合を良くしているだけだけど。

「黒川の声、初めて聞いたよ」

橘君は思いもよらないことを言った。
そう、私は、しゃべらない。だけど、高校の時、授業で当てられ、しゃべったこともあったと思う。いや、先生も私はささなかったかもしれない。しゃべらないことは日常だったから、もう思い出すことも出来ない。
私はしゃべることが出来ない女の子だと思われていたかもしれない。

「俺はもっと黒川と話がしたい。返してくれなくてもいい、もっと話がしたい。いいかな?せっかくモモちゃんが引き寄せてくれたんだから」
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