ピュア・ラブ
うっすらと思い出す記憶。
本を読み、没頭すると周りの音は聞こえなくなる。橘君に声をかけられていた時も無視をした訳じゃない。多分。
そうだ、女子が、「声をかけているのに無視することないのにね」と言っていた。ほら、過去を消したはずなのに、こうして知り合いが現れると、思い出したくもないことが次から次へと頭に蘇ってくる。
「でも、俺がしつこく声をかけると、黒川の迷惑になっていたんだよな。女子に陰口を言われて、悪かったな」
過ぎたことを気にするのは、こういう類いの、そう、皆から愛され、幸せな人間だけだ。
自分は悪いことをしていたつもりがないけれど、結果としてそうなってしまった。だけど、いつまでも良い人でいたいから、過ぎ去ってしまったことでも謝らない訳にはいかない。
私は、それによって思い出したくもないことを思い出す。それは罪な事ではないのか。
「黒川にとって嫌なことを思い出させちゃったかな、それもごめん」
もう、橘君の過去にたいする懺悔はお終りだろうか。
私は暑さに弱い。日陰にいるとは言っても、喉も渇いて、頭が痛くなってきた。
これは熱中症の前兆だ。すぐに帰らないと、もっとひどくなる。明日は仕事だし休めない。
でも、しゃべるのはもっといやだ。
背中に変な汗が流れる。
持っていた卒アルを何とか橘君に帰すと、会釈をして自転車に手をかけた。
「黒川? 具合が悪いんじゃないか?」
そうよ、だから早く帰るの。もう話しかけないで。
首を左右に振り、違うと伝え、自転車のスタンドを外すと、少しふら付いた。
本を読み、没頭すると周りの音は聞こえなくなる。橘君に声をかけられていた時も無視をした訳じゃない。多分。
そうだ、女子が、「声をかけているのに無視することないのにね」と言っていた。ほら、過去を消したはずなのに、こうして知り合いが現れると、思い出したくもないことが次から次へと頭に蘇ってくる。
「でも、俺がしつこく声をかけると、黒川の迷惑になっていたんだよな。女子に陰口を言われて、悪かったな」
過ぎたことを気にするのは、こういう類いの、そう、皆から愛され、幸せな人間だけだ。
自分は悪いことをしていたつもりがないけれど、結果としてそうなってしまった。だけど、いつまでも良い人でいたいから、過ぎ去ってしまったことでも謝らない訳にはいかない。
私は、それによって思い出したくもないことを思い出す。それは罪な事ではないのか。
「黒川にとって嫌なことを思い出させちゃったかな、それもごめん」
もう、橘君の過去にたいする懺悔はお終りだろうか。
私は暑さに弱い。日陰にいるとは言っても、喉も渇いて、頭が痛くなってきた。
これは熱中症の前兆だ。すぐに帰らないと、もっとひどくなる。明日は仕事だし休めない。
でも、しゃべるのはもっといやだ。
背中に変な汗が流れる。
持っていた卒アルを何とか橘君に帰すと、会釈をして自転車に手をかけた。
「黒川? 具合が悪いんじゃないか?」
そうよ、だから早く帰るの。もう話しかけないで。
首を左右に振り、違うと伝え、自転車のスタンドを外すと、少しふら付いた。