あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
〝12月24日、午後5時。駅前の大きなクリスマスツリーの前。〟


朦朧としている意識と、真っ暗な世界。そこに聞き覚えのある声が響いた。


───12月24日、午後5時。駅前の大きなクリスマスツリーの前。


俺は、その言葉の主を探すために周辺を見渡しながら走り出した。

本当に進んでるのだろうか。という疑問を抱きながら、真っ暗な世界を俺は走り続けていた。

これだけ黒くて何もないような空間だと
、今自分がどれだけ進んでいるのか、把握のしようがない。

走るのをやめようかと思いかけてきた頃、長く黒い髪をした女性の後ろ姿が見えてきた。

少し懐かしく感じるようなその後ろ姿に辿り着こうと、俺は走るスピードを上げた。そして、走って、走って、走った。


───だけど、辿り着かない。


今度こそ進んでいない。これは、確実に進んでいない。

だって、彼女の姿は同じ大きさのままで見えていて、全く近づいてきやしないのだから。


何だこれ、何で進まないんだよ。

それより、あの彼女って────。


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