婚約者は高校生
エレベーターホールを抜けてエントランスに着くと待たせていた彼女の姿が視界に入る。
彼女は手にしている本に視線を落としていて、こちらに気付く様子は微塵も感じられない。
……まあ、な。
人を待つ間の時間、暇になるから本を読むのはわかる。
ましてや学生だしな。
勉強のためにも読むことは大事だとは思う。
…だけどな。
一応、知りたいと思う相手を待ってるんだろ?
だったら、顔を上げてまだ来ないか周りを確認をしたり、遅いなと感じたら時計を見たりするんじゃないのか?
そのそぶりすら見えないとは…本当に俺を婚約者にしたいと思っているのか疑いたくなる。
俺はひとつため息をついてから彼女に近づいた。
「待たせたね」
仕事モードで明るく声をかけると彼女は本を閉じて俺を見た。
その顔は喜んでいるわけでも、笑顔を浮かべているわけでもない。
いたって普通。
特に表情を変えることなく俺を見上げていた。
俺がにこやかに話しかけてやってるんだから、少しくらい愛想よくしたらどうなんだ。
「行こうか」
腹の中で毒づきながらも俺は表情を崩すことなく彼女に手を差し出す。
彼女は戸惑ったようにそれを見つめていた。
…ああもう、早くしろよ。
俺はその手をつかむと駐車場に向かって歩きだした。