婚約者は高校生
「多賀さん」
終業後。
いつものようにエントランスに向かうと、そこで待っていた瀬野尾姫紀が先に俺に声をかけてきた。
その手にはいつも読んでいるはずの本はない。
へぇ。
珍しいこともあるものだ。
「今日は本を読んでいないんだな」
「はい。…それよりも多賀さんに聞きたいことがあるんですが」
彼女は深刻そうな顔つきでこちらを真っ直ぐに見てきた。
なんだ?
何かあったのか?
仕事で取り返しのつかないようなミスでもしたか?
いや、でも彼女には雑用しかさせていないはずだし、かなり深刻なミスであるならすぐさま報告が上がってきてもいいはずだ。
今のところ、そんな報告は受けていない。
「…何が聞きたいんだ?」
思案しつつ彼女の言葉を促すと、彼女は少し迷ったように視線をさまよわせたあと、何かを決意したように強い瞳でこちらを見た。