婚約者は高校生

坂下さん?
ああ、瀬野尾姫紀のことか。



「ああ、彼女は…」



…なんて言ったらいいのか。

婚約者ではないし、彼女でもない。
瀬野尾姫紀があえて坂下と名乗っている以上、瀬野尾グループの社長令嬢と言うわけにもいかない。

妹と言うにしても無理がある。

妹と言っても問題ない年の差ではあるが、俺に妹などいないことはきっと知っているだろうからな。


さて、どう答えたものか。


瀬野尾姫紀の方をちらりと見ると、彼女は「まかせてください」というような視線を一瞬俺に向け、口を開いた。



「私は多賀さんのお祖父様の知り合いの娘です。社会勉強のためにこちらでアルバイトをさせてもらっていたんです」



「社会勉強?そうだとしても…」



近づきすぎじゃない?と言いたげに眉を寄せる女子社員に彼女はにこりと笑顔を返す。



「言いたいことはわかります。私はもう高校生なのに親が過保護なんですよ。多賀さんに私を見ておくようお願いしたんだと思います」



女子社員は「へぇ、そうなの」といいつつも納得はしていないようだ。

まあそれはそうだよな。いきなり来た一週間だけの短期バイト。
猫の手も借りたいとはいえ、一週間ではろくに仕事も覚えられないし、助かるというよりもお荷物だ。

しかもはた目から見たら、俺がアルバイトをよこすように頼んだように思えるし。
「上」からの指示だと知らなければ、俺と何かあるのかと勘ぐられても仕方ない。


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