婚約者は高校生
…考えていないんだろうな。
内心ため息をつきながら女子社員に背を向け、エントランスを出ようとしたとき、やや先を歩いていた瀬野尾姫紀が何かを思い出したように振り返った。
「あ、そうだ。ひとつ言い忘れていました」
彼女の視線は俺を素通りし、後ろにいる女子社員に向けられていた。
「言い忘れたことって何かしら」
女子社員は大人の余裕をみせつけるかのように笑みを絶やさない。
「実は…多賀さんに彼女はいませんが、婚約者がいます」
はぁっ?
な、何を言い出すんだ、この子は!!
彼女の爆弾発言によって俺が驚いたのと、女子社員の顔が凍りついたのは同時くらいだった。
「なっ…な、ど、どういうことよ!?」
言われた意味が飲み込めず、動揺しながらもどうにか言葉を返す女子社員に対し、彼女は落ち着き払っていた。
「このあいだ、多賀さんはお見合いをしたんですよ」
そうですよね?と同意を求めるように彼女は俺を見上げた。