婚約者は高校生
一通り魚を眺めた後、先ほどシミュレーションした通りにミュージアムショップに立ち寄ろうとすると、彼女は驚いたように俺を見上げた。

まさか寄ってもらえるとは思わなかったとでも言いたげだ。



「なんだ、その顔は」



「え…なんで寄りたいのがわかったのかなと…」



別に寄りたいのがわかったわけじゃない。
大抵の女性ならこういう所に寄りたいだろうという予想をしたまでのことだ。

ま、男を手玉にとるような女ならまずこんな所には来ないけどな。
俺に言い寄ってくる女性の大半は獲物を仕留める獣の目をしているから、こんな可愛らしい店など目もくれない。

どうすれば俺の気を引けるかばかり考えていて、自分に素直にならない女性が多かった。
最近知ったのだが、「多賀さんと付き合うならそれ相応の人でないと」という女子社員の暗黙の了解があるらしい。

そのせいか、俺の周りには自分をよく見せようという女性しかいない。
少しでもよく見せたくて、俺に合わせて無理をする。
その気持ちもわからないでもないが、俺としてはそんなことをしてほしくはない。
そう言ったところで、変わるわけではないことはわかっているが、な。

そんな女性と付き合う気はなかったし、今は一応婚約者がいるしな。
特に気にすることでもない。



「…ほら、行くぞ。見たいんだろう?」



そう言って見下ろすと、彼女の顔がパッと嬉しそうに輝いた。


…普段は大人びた感じなのに、こういうところは素直なんだな。
なかなか面白い。


俺は小さく笑うと彼女の手を引いて店内に足を踏み入れた。



















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