婚約者は高校生
「詫びならいらない。あの祖父様から言われたのなら断ることなんかできないだろう?それに…俺は社会人で働いてるんだ。働いてる身からして女子高生からこんな物はもらえない」



普通ならここで「そうですか」と引き下がるだろう。受け取ってもらえないことに少々落ち込むかもしれないことは予想がつくが、まあそれは仕方ない。

そう思っていたのだが、またしても彼女は斜め上をいった。



『ああ、そこは気にしないでください』



そうだよな、社長令嬢だもんな。
お金の心配なんかするはずないよな。
どうせ親から小遣いをたんまり貰ってるんだろ。



『この間、バイトしたお金で買いましたので』


「…は?」



バイトというと、うちの会社でやったド短期のバイト意外に思い当たらない。
たいした額ではなかったそれをプレゼントに使ったって言うのか。

………………っ、一気に断りづらくなったじゃないか!!!
親から溢れるくらい貰ってるお金から、とかだったら間髪を入れずに断れるのに!!
もしそうだったら冷たく「子供が余計な気をつかうな」と言えたのに!!


苦悩している間に彼女は今日のお礼を言って電話を切ってしまった。
俺はため息をつきながらステアリングにもたれかかり、切れてしまった携帯を眺める。


……はぁ。頑張って働いたお金で買ったことを知った以上、無下にもできないし…。

持って帰るしか選択肢はないことを実感していると、携帯がお祖父様からの着信を告げた。


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