婚約者は高校生
その甲斐あってというべきか。
一週間と経たないうちに話題になり、売り上げは上々。
忙しさも落ち着いてきたころ、嵐はやって来た。



「たまたま近くで仕事があったので、ついでに寄ってみました」



と言ってやって来たのはモデルの沙梨。
プライベートでは極力関わりたくないが、仕事上、適当な対応もできない。

狙って来たのか、いないのか。
本来なら応接室での対応となるが、昼前に来たこともあり、とりあえずカフェに連れ出すことにした。



「沙梨さんのおかげで売り上げは順調ですよ。ありがとうございます」



軽食を注文し、待っている間に業務的に仕事の礼を口にすると沙梨は満足げにニコリと笑った。



「そうですか。それはよかったです」


「またよろしくお願いします」


「はい、それはもちろん。こちらこそよろしくお願いします。…それはそうとして」



…ああ、これは何か聞いたな。

仕事の形式的な空気をぶった切るように話題を変えたことに内心ため息をつきつつ、先を促すように笑顔を作る。



「婚約されたと聞いたのですが…ふふっ、そんなわけないですよね」



だって私がいるんだから。と言いたげに沙梨は視線を投げかけてくる。

艶のある唇に軽く指をのせながらゆっくりと紡がれる言葉は色気に満ち、夜でもないのにその瞳は獲物を捕らえようと妖しく輝き、今すぐにでも落とす勢いだ。
妖艶な瞳の中に獰猛な野獣の光をちらつかされたら、大抵の男は逃げられずに捕獲されてしまうに違いない。

しかも相手はモデル。魅惑的な野獣。




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