魅惑な彼の策略にはまりました
「四季の愚痴はいつも痛々しいけど、今回は格別だね」


私の横でおしんことたこわさをローテーションしているのは、リリこと山形律子(やまがたりつこ)・36歳。

ドレッドのロングヘアと厚めの唇がR&B歌手みたいな彼女は、ハリウッド仕込みのヨガインストラクター。
生粋のヨギーニだ。

私たち三人はかれこれ10年に及ぶ立派な飲み友達。
ふたりがそれぞれ国外脱出していた期間もあるけれど、変わらぬ友情を維持してきている。

現在は、用事がなければ週2回程度、馴染みの居酒屋“招き猫”に集まり、杯を酌み交わす仲だったりする。

本日、私は先週体験したプライドずたずた事件の経緯を二人に語りつくしたところだ。


「っていうか、そのガキんちょどものこと怒ってないんじゃなかったの?今の感じだと、ガンギレてるじゃない」


「まあ、できることなら人間社会から抹殺してやりたい」


「怖」


宗十郎が両腕を抱いて身震いして見せる。もともとリアクションが少ないので、顔は真顔のままだ。
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