魅惑な彼の策略にはまりました
しかし、モデルのアネラが痴情のもつれで喧嘩だなんて、事務所も困るだろう。
宗十郎も早く話を済ませる気らしい。


「アネラのことは、好きじゃないから」


冷たく響く声だった。
単純に同じ女として、アネラに同情の念が沸く。宗十郎のナイフのように切れ味抜群のセリフで切り伏せられたら、立つ瀬なんかない。


「アネラが本気だって知ってた。だから、恋人にはできない。もし、アネラが遊びでいいって言ったら、今までは寝てたかもしれない。でも、もう無理。抱いてやれない」


宗十郎は言葉を切った。


「中途半端に欲求に従うのはやめようかなと思ってるところ。真面目に恋愛できそうな気がしてきたし」


アネラは口の中で何がしかを呟いた。英語の罵り言葉だったけれど、それを怒鳴ってさらに注目を集めるということはできないという分別があった。


「送るから、今日は帰れよ」


「いい。ソウと会うのはこれっきりだから」


アネラは苦く、そしてわずかに切なく呟いて、背を向ける。
通りですぐにタクシーを捕まえる姿が確認できた。

アネラをかわいそうだとは思わないようにしたい。
だって、そんなの優越感丸出しだもん。
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