クレーマー
あたしの目は京一郎を追いかけて、テストを受け取る様子を見ていた。


京一郎は明彦と同じように笑顔を浮かべ、あたしの隣にいるこの美の席へと向かった。


「テスト、よかったの?」


「あぁ。96点だったよ」


「さすが、京一郎! すごいね!」


この美の嬉しそうな声が聞こえて来る。


チラリと人に視線をやると、京一郎のテスト用紙が見えた。


右上に大きく96点という点数が書かれている。


今回のテストはあたしでも簡単だと思っていたから、京一郎なら90点を超えると思っていた。


分かっていたことだけれど、少しだけ肩が落ちた。


京一郎は本当に完璧だ。


見た目も頭脳も、スポーツだってよくできる。


2人の様子を見ていたら、いつの間にか男子の返却が終わり、この美が呼ばれていた。


あたしの視線は自然とそちらへ向かう。


テスト用紙を受け取ったこの美は少しだけ首をかしげ、そして眉間にシワを寄せた。


点数があまり良くなかったんだろうか?


この美も京一郎と同じくらい頭がいい。


それなのに今回のテストで満足できる点数じゃなかったと言う事は、調子でもわるかったのかもしれない。
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