野良猫は膝の上で眠る

俯いて考えている私を心配してか、衣鶴先生に声をかけられた。

「すーず、どうした?」

「ね、衣鶴先生。私、なにか忘れちゃったかも。とても大事なのに。
忘れちゃった、かも、しれないのっ」

そう思うと涙が止まらなくて、怖くて、悲しかった。

ただはらはらと流れる涙を拭う事もしないで衣鶴先生の首に腕を回した。

「怖いよ、たす…っ、けて」

熱があるせいで体は重くて言うことは聞いてくれないけど精一杯の力でしがみついた。

「熱のせいかもな。記憶障害になったのかもしれない。直に思い出すから安心しろ」

「ほっ、ほんと?」

「あぁ、ほ、ん、と。それより針抜けてる。一回指したとこはもう使えねぇーから気をつけろよ」

私をゆっくりと寝かせながら針の外れてしまった腕を持ち上げる。

腕からは血が滴っていて、外れた針の先からは液体が零れていた。

「只でさえ鈴は血管細くて取りにくいのに」

そう言いながらも器用にぷすりと私の腕に針を指し、もう1度点滴を繋いでくれた。


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