野良猫は膝の上で眠る
寂しがり屋の猫


「はる。起きて。」

今日は、はるがお出かけに連れていってくれるらしい。

でも、起きない。
痺れを切らしてはるを揺すってみる。

「わっ……!」

はるに正面から抱きしめられてしまう。

苦しいけど、この瞬間が好きだ。

「おはよ。すず。」

「うん。」

誰かにおはようと言われたのはいつぶりだろう。

そのせいでだいぶ無愛想な返事だ。

「ヒャッ!ちょっおろして。」

さっきまで寝ていたのに、次の瞬間私を抱っこしている。

その細い腕のどこにそんな力があるのか。

「猫は、抱っこ嫌いだったっけ?」

「歩く。」

すると、はるはすんなり降ろしてくれた。

「いたっ!」

忘れてた足痛めてた。

はるを見上げると全部分かっていたように笑っていた。

「分かってたの?」

はるは笑ったまま。

分かってて私に自分から抱っこお願いさせようとしてる。

「はる……抱っこして。」

恥ずかしいけど、歩けないから頼むしかない。

「いいこいいこ。」

私の髪をすくように頭を撫でるはるはどこまでもずるい。

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