御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
椅子から立ち上がると私はベランダに出た。

大きく深呼吸をして心のなかで

落ち着け自分と何度も呪文の様に唱えた。

あと一緒に過ごせる時間は１ヶ月を切ってる。

鈴城君の心の中に私と過ごした時間が少しでも楽しかったって

思ってほしいのに口からでる言葉と思っていることがちぐはぐで

時々わからなくなる。

逆に思いっきり嫌われて別れた方が楽なんじゃないかなって

思ってしまう・・・・

それでも最後まで演じなきゃ。



「のあ」

名前を呼ばれ振り向くと

鈴城君がワイングラスを持って私の後ろに立っていた。

「鈴城君・・・・」

「律」

「え？」

「理由はどうあれ俺たちは夫婦だ。残りの１ヶ月だけでも夫婦らしく
名前で呼び合わないか？」

鈴城君は一歩私に近づきワイングラスを差し出す。

断る理由もない私は小さく頷きながらグラスを受け取り小さく深呼吸をする。

「律・・・さっきはごめんなさい。私の事を気にかけて言ってくれたのに私は・・・・」

鈴城君はベランダの手すりにもたれかかり首を少し傾けながら小さく笑った。

「俺が何も知らないとでも思ってる？」

「え？」

何を言おうとしているのかわからず目をパチパチさせる。

「のあが俺について行くかどうかを上司に聞かれたよね」

「･･･そ、それは・・・」
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