好きにさせて
興味もなければ何人で行うスポーツなのかも知らなかった。
そんなわたしがバスケットボールを理解出来るようになったのは元カレがバスケ部に所属してるからだ。
よく、試合を見に行った。
部活の練習風景もよく見てた。
いっぱい、話をしてくれた。
わたしにボールを触らせてくれた、彼の自主練に付き合った……いろんなことを教えてくれた。
「……っ、」
マスクの下で唇に血が滲む。
もう泣いた、泣いたんだ。泣き疲れて眠っちゃうくらい全部流したんだ。
何もわたしの胸には溜まってなんかない。
「…関係ない」
思ったより震えた音だった。
「さく…ら?」
必死にこの想いが溢れないように抑える。周りの騒音がどこか遠くで鳴っているようだ。
瞬きしたら落ちてしまう。
「わた、し…こんなに…弱かった、っけ」
見れない、見られない。
俯けば映るのは握りしめ震える自分の拳だった。
「ねぇ!さくらってば!」
…好き、好きだったの。
楽しそうにプレーをする彼が。
点を取れば嬉しそうに白い歯を見せてわたしに笑顔をくれる……
ねぇ、想い出が苦しいよ。
ワアァアアと、音がわたしに入る。
その歓声は試合がはじまるのを意味していた。
「お~!やばいやばい!みんな立ってる〜」
「え!何あの1年!この前より背高かっ!」
「あ〜!3年生もたまんなぁ〜い!どっち応援する〜?」
そして試合が始まった。
ドリブルの音、シューズの音…耳をすませば微かに聞こえる。ほとんど歓声にかき消されるけど、彼はまだコートに立ってない。
確かめたい、確かめたいけど…顔を上げられない。