好きにさせて






もう、やだ。本当にやだ。

まだ数週間しか経ってないの、そんな早く……切り替えられるわけないじゃん。



やっぱり、わたしの気持ちは…。




何も見たくない、何も聞きたくない、何も感じたくない。

目を瞑り、耳を塞ぎ…




わたしはこの時間がすぐ終わることだけを祈った。地獄だ、そう思うわたしは酷いだろうか。





バコンッ!とわたしの頭に衝撃が落ちる。




「アンタ何やってんの!ちゃんと観なさいよ!」


「彼、コートに立ってるわよ!!」


「試合終了まであと50秒〜!」



顔を上げ、周りを見ればわたしを本気で叱る友人がいた。



「頭殴らなくても…」


めっちゃ痛かったし。
わたしは打たれた後頭部を手でおさえる。




「さくらはウチらが殴ったくらいじゃ分かんないわよ、さくらが彼を見なくてどーすんの!別れてるかもしれない、もう終わってるかもしれない、それで?だから何?今のさくらの気持ちは何よ!」



歓声と熱気で充満する体育館、その中ではっきりと彼女の言葉がわたしに入ってくる。



「ほんっと、この分からずや!あと何回殴って欲しいわけ?!みんなね、この数週間さくらっちを見てんだよ、逃げんなさくらっち!」



「ほら!さくらちゃん見る!」



バカ力女子にグイッと前へ、コートの方へ体を押される。柵に手をかけ、下を覗き込むと、大好きだった彼がボールを奪い走り出していた。



グッと喉が締まり、胸がドクンと音を立てる。



「…っ、ぃ…い」



声が、出ない。


わたしや、観客のみんな、誰もが彼を目で追いかける。



時間が止まったかのような静けさ、



彼は自分が目立つようなプレーは好まない。


だけど、正確な状況判断が出来る彼のプレーはたまに凄くかっこいいんだ。



息をのむ瞬間、誰もがくぎ付け、



残り時間なんて残ってない。







< 33 / 43 >

この作品をシェア

pagetop