好きにさせて
もう、やだ。本当にやだ。
まだ数週間しか経ってないの、そんな早く……切り替えられるわけないじゃん。
やっぱり、わたしの気持ちは…。
何も見たくない、何も聞きたくない、何も感じたくない。
目を瞑り、耳を塞ぎ…
わたしはこの時間がすぐ終わることだけを祈った。地獄だ、そう思うわたしは酷いだろうか。
バコンッ!とわたしの頭に衝撃が落ちる。
「アンタ何やってんの!ちゃんと観なさいよ!」
「彼、コートに立ってるわよ!!」
「試合終了まであと50秒〜!」
顔を上げ、周りを見ればわたしを本気で叱る友人がいた。
「頭殴らなくても…」
めっちゃ痛かったし。
わたしは打たれた後頭部を手でおさえる。
「さくらはウチらが殴ったくらいじゃ分かんないわよ、さくらが彼を見なくてどーすんの!別れてるかもしれない、もう終わってるかもしれない、それで?だから何?今のさくらの気持ちは何よ!」
歓声と熱気で充満する体育館、その中ではっきりと彼女の言葉がわたしに入ってくる。
「ほんっと、この分からずや!あと何回殴って欲しいわけ?!みんなね、この数週間さくらっちを見てんだよ、逃げんなさくらっち!」
「ほら!さくらちゃん見る!」
バカ力女子にグイッと前へ、コートの方へ体を押される。柵に手をかけ、下を覗き込むと、大好きだった彼がボールを奪い走り出していた。
グッと喉が締まり、胸がドクンと音を立てる。
「…っ、ぃ…い」
声が、出ない。
わたしや、観客のみんな、誰もが彼を目で追いかける。
時間が止まったかのような静けさ、
彼は自分が目立つようなプレーは好まない。
だけど、正確な状況判断が出来る彼のプレーはたまに凄くかっこいいんだ。
息をのむ瞬間、誰もがくぎ付け、
残り時間なんて残ってない。