好きにさせて
体育館の歓声と熱気は続き、試合が終わった選手たちに近寄ろうと女子たちは行動する。みんなが手にするのは想いを込めたお菓子だ。
バレンタインデー、それは女の子に勇気をくれる特別な日。
大切な日。みんなが可愛く、綺麗に見られようと努力して、頑張って片想いの恋に一歩踏み出す。
わたしは…。
ムリ…だよ、違う…よ。
ツンっとなる鼻と、無意識に力の入る自分の手を感じる。
「さくら?このままでいいの?」
「さくらちゃんの恋愛、こんな終わり方でいいの?」
うるさい。おまえら何なんだよ。
普段どうでも良さそうにしてるくせに、こんなズカズカと踏み込んで来やがって。
「別にさくらのことなんかど〜〜〜でも!いいんだけどさぁ、いつまでもこんなんだとウチのこの頭ん中のもやもや〜が無くならなくてイライラすんだよね、だからウチのために行ってこい!」
「…さすがにそれ理不尽じゃね?まぁ、さくらに後悔して欲しくないよ」
「アタシらに出来ることってやっぱ限られてるし、当人が動かなきゃ何も変わんない。さくらっちいい加減動け」
「………」
やだよ、すっぴんだしこんな格好だし…彼の前へなんて出て行きたくない。
バレンタインデーだからってわたしが出しゃばるとろくな事にならない、そんなの分かってるんだよ。動かない。
わたしのことなんて…もういいの。
ちらっとコートのほうを見ると、彼がいて最後のプレーの効果か女子が他の男子より数倍押し寄せている。
「…っ、」
その中で見えた、わたしと付き合ってた頃にもよく彼を見ていた女の子…1年生の男バスマネージャー。彼は照れくさそうにその子からチョコを受け取った。
なんてタイミングだ、あーあ。
「ほれほれ〜、さくらっち行くよ〜」
手を引かれ、周りの女子に押されるようにして1階へ続く階段へとわたしの体は運ばれる。
階段をおり1階へつくと、わたしにチョコを持たせようとチョコを押し付けてくる。
「……いい、いらないよ」
やっとの事で出たわたしの声は弱々しく、自分で聞き取るのも難しかった。
「何言ってんの〜!ほーら!」
………もう、いいんだって、
本当にいいんだってば。
うるさい、うるさいうるさい…うるさい!
「さく「やめてってばっ!!!!」
劈く声は、賑わう体育館では目立たない。わたしをかこう女子の顔が見れなくてわたしは俯く。