好きにさせて
ああ、もう!2回も“さーな”で誤魔化してんじゃねえよコノヤロ。
コトハは、遠くを見上げるのをやめてわたしへと視線を落とした。
な、なによ…?そんないきなりなりわたしを見るな!
「おまえさー、眉毛くらい描いてきたらどうなの?」
困ったように眉を下げて、口もとは意地の悪そうな笑みを浮かべコトハそう言った。
「……うっさい!」
わたしは慌てて前髪を両手でおさえる。
たまたまこの前、眉そり失敗して今は全部剃ってしまってるだけだ、いつもこういうわけじゃない。
コトハはちょっと待ってろ、と言うとパーカーのポケットをもぞもぞしだした。
「あ、あった」
そう言ってコトハが取り出したのはアイブロウペンシルである。
「なんでそんなの持ち歩いてんの…引くわ」
「うっせー」
コトハはわたしに近寄り屈むと、わたしからメガネを外した。至近距離で合う目に、熱が顔へ集まるのを感じる。
微かに触れてくるコトハの手に胸がくすぐったい。
「…もう、なに」
ぶすっとコトハを睨めば、コトハはいつもの調子ではいはいとわたしをなだめる。
前髪を押さえるわたしの手は、コトハの手によってのけられ、撫であげらるようにわたしの前髪は顔からのけられた。
もちろん、前髪をおさえる手はコトハのものだ。
「じっとしてろ」
言われた通りわたしは大人しくする。
眉があるであろう所に違和感を感じて、キレイに描いてよね、と一言コトハに零す。
「はい、どうぞ」
暴れていいぞーと言ってコトハの手はわたしの顔から離れる。
腰を上げて立ち上がったコトハはわたしを見下ろすようにして、わたしの姿を確認する。
「おまえやっぱ太ったよな?」
「しね!」
手の隙間から見るコトハの真剣そうな表情にドキドキなんかするんじゃなかった。てかするわけない、してない!よし。
コトハはわたしがかけていたはずのメガネをすっと自分にかけた。
「それわたしのメガネ」
「どう?俺イケメン?」
「本当、しねば」
わたしより似合ってんじゃねえよ。