オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
職場では愛美の嫌いな俺様上司、二人で会う時は優しい恋人の“政弘さん”を演じている。

そのギャップで愛美にとって“政弘さん”は更に優しく思えるだろう。

自分の弱さとずるさに嫌気がさして、水割りを一気に飲み干した。

(俺は愛美が思ってるような、優しい大人の男じゃないよ…。本当はこんなに弱くて情けない男なんだ…。)

酔いがまわるほどに思考がネガティブになり、ひどい自己嫌悪に陥って、愛美の気持ちも、自分の気持ちさえも疑ってしまう。

愛美の姿を見掛けるだけで幸せになれた淡い片想いの頃とは違う。

愛美が笑顔を見せてくれるようになった時や、初めて“政弘さん”と呼んで“好きです”と言ってくれた時は、どうしようもないくらい嬉しくて幸せだったはずなのに、好きになるほどもっと愛して欲しいと欲張る自分がいる。

自分は本当の自分をさらけ出せないくせに、愛美には分かりやすい愛情を求めてばかりだと気付いた。

好きだから嫌われたくないし、愛して欲しい。

(こんな俺じゃ愛してもらえないよ…。)

もう何杯目かわからない水割りを一気に飲み干し、ため息をついてソファーに倒れ込んだ。

虚ろな目に映る天井がグルグルとまわる。

目を閉じると、浮かんでくるのは愛美の顔ばかり。

愛美が健太郎と会っている事に腹を立てていたはずなのに、何事もなく自分の元に戻ってきてくれる事を願っている。

(愛美があいつと会ってるのわかってて何にも言えないくせに、一人でやけ酒とか…俺ってホント情けない…。)





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