オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
4時を少し過ぎた頃。

緒川支部長と佐藤さんが支部に戻ってきた。

内勤席に愛美の姿がない事に、緒川支部長は首をかしげた。

「支部長、おかえりなさい。お疲れ様です。」

入り口の近くの席の金井さんが声を掛けた。

「ただいま…。金井さん、菅谷は?」

「ああ…菅谷さんなら…。」

金井さんが答えようとした時、愛美が健太郎の肩を借りて、ヒョコヒョコと右足をかばいながら支部に戻ってきた。

「あ、ちょうど帰ってきた。菅谷さん、おかえりなさい。」

「すみません…勤務時間中に…。」

緒川支部長は愛美と健太郎の姿を見て、眉間にシワを寄せた。

「出掛けてたのか?」

「あ、支部長…。すみません、病院に…。」

「……そうか。」

ぶっきらぼうにそう言って、緒川支部長は支部長席へ戻って行く。

健太郎はその背中をチラリと見ながら、愛美を内勤席の椅子に座らせた。

「じゃあ、帰り迎えに来るから。」

「もういいって…。自分で帰れる。」

「絶対来るからな。待ってろよ。」

愛美の頭をポンポンと軽く叩いて、健太郎は去って行った。

「ちょっと…!」

(もう勘弁してよ…。これ以上変な目で見られたくないのに…。)

愛美がため息をつきながらパソコンに向かった時、緒川支部長が内勤席のそばに来て封筒を差し出した。

「菅谷、これ。」

「あ…ハイ。」

愛美がそれを受け取ろうと手を出すと、緒川支部長は小さな声でボソリと呟いた。

その言葉に、愛美は目を見開いて顔を上げた。

「え…?」

緒川支部長は愛美に背を向けて支部長席へ戻って行く。


“あいつの言う事なら素直に聞けるんだ”


苛立たしげな緒川支部長の言葉が、何度もくりかえし愛美の耳の奥で響いた。






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