オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
緒川支部長は支部長席で険しい顔をしてパソコン画面に向かっている。

いつもはおしゃべりなオバサマたちが、緒川支部長のピリピリした空気を感じ取って、いつになく大人しい。

愛美は内勤席で契約のデータ処理をしながら、さっきの緒川支部長の言葉を思い出していた。

(支部長が病院に行こうって言った時は思いっきり拒否したのに、結局健太郎に無理やり連れて行かれちゃったからな…。)

もしかすると、健太郎に病院へ連れて行かれたのが、緒川支部長の留守中だった事も気に障ったのかも知れない。

(支部長が気を悪くしても仕方ない…。後で謝ろう…。)



定時になり短い夕礼が済んだ後、愛美はゆっくりと椅子から立ち上がった。

痛む足をかばいながら支部長席に向かって歩いていると、突然後ろから両肩を掴まれた。

「愛美、帰るぞー。」

「来なくていいって言ったのに…。」

「家まで送ってくから。」

「自分で帰れるからいい!」

「無理すんな。その足じゃまともに歩けないだろ。」

「もういいってば!」

愛美が健太郎を振りきろうとしていると、緒川支部長がパソコンの画面に視線を向けたまま、突然拳で机を叩いた。

支部全体がシーンと静まり返る。

「うるさい。痴話喧嘩はよそでやれ。」

冷ややかなその声に、オバサマたちは口を閉ざして縮み上がった。

「……すみません…。失礼します…。」

愛美は深々と頭を下げた。

峰岸主管が、眉間にシワを寄せてパソコンの画面をにらみつけている緒川支部長と、シュンと肩を落とす愛美を交互に見て小さくため息をついた。

「菅谷さん、帰りは送るから残業できる?手伝って欲しい事があるの。」

「…ハイ。」

「そういう事だから…中島さん、菅谷さんは私が送るから安心して。」




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