オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
愛美が更衣室で着替えている間、緒川支部長は廊下の長椅子に座って待っていた。

意味もなく車のキーを眺めながら、峰岸主管はきっと最初からこうするつもりだったのだなと考える。

本当は健太郎に対して“愛美に手を出すな!!”と言いたいのに、支部長という立場もあり、職員たちの前ではそうする事もできず、イライラして愛美にイヤな言い方をしてしまった。

愛美はどう思っただろう?

(カッコわる…。最悪だ…。)




愛美は緒川支部長の車の助手席で、黙ったまま窓の外を眺めていた。

緒川支部長も一言もしゃべらない。

重苦しい沈黙が流れる。

(何か話した方がいいのかな…。)

緒川支部長の留守中に健太郎と病院に行った事を謝った方がいいのか、それとも職場で部外者の健太郎と小競り合いをした事を謝った方がいいのか。

どちらにしても謝るべきなのだろうが、なんと言って謝ればいいのか言葉が思い浮かばない。

散々悩んでいるうちに、一言も発する事なく、車はマンションの前に到着してしまった。

「すみませんでした。」

愛美はシートベルトを外し、頭を下げて車を降りようとした。

緒川支部長はエンジンを止めて車を降り、助手席のドアを開けた。

「部屋まで送る。」

足に負担をかけないように、緒川支部長は愛美の体を支えた。

「すみません…。」

緒川支部長に支えられながら、部屋の前までゆっくりと歩いた。

ドアを開けて玄関に入ると、緒川支部長は突然愛美を軽々と抱き上げた。

(えっ…?!)


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