青と口笛に寄せられて


政さんは満点の星空を見上げながら、私の方は見ることなく単刀直入に話し出してきた。
それは、私が今日1日で感じていたことだった。


「啓の様子、おかしいと思ったしょ?」


やっぱり私が変だと思っていたのは間違いじゃなかったんだ。
仕事をしている時は変わらなかったのに、私と2人きりになったら急にいつもの啓さんではなくなっていた。
あれは何だったのか。


「私、何か怒らせるようなことしちゃったのかな……。夕方、妙なこと言ってきたし」

「え?なんて?」

「東京に戻りたかったら、自由にしていいって」

「………………う〜ん、そっかぁ」


政さんはボリボリと頭をかいて、悩ましげに眉間にシワを寄せる。
どうやら彼は何か事情を知っているらしい。
これを逃したら啓さんが思っていることはよく分からないままな気がして、政さんににじり寄った。


「政さん、何か聞いてるんですね?」

「………………啓は、ここ数ヶ月ずっと悩んでたんだわ。麗奈がいなくなって、仕事が忙しくてきちんと話すチャンスが無かったから、深雪ちゃんは気づかなかったと思うんだけど」


ドキッと胸が苦しくなる。
嫌な予感ほど当たるような不安に襲われる。
啓さんが悩んでいたこととは、まさか私と別れたいとかそういうこと?
それなら夕方の発言はうなずける。


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