青と口笛に寄せられて
「まず、深雪ちゃん。今から話すことで、誰かを責めたりするのはやめてね。これは約束して」
前置きらしく、政さんが人差し指を口元に当てて「内緒」のポーズをとる。
誰かを責める?私が?
意図を汲み取ることが出来ないまま、とりあえずうなずいた。
彼は私がうなずいたのを確認してから、ゆっくり話し出した。
「春に、深雪ちゃんの妹の里沙ちゃんが来たしょ?あの時、俺と啓は彼女にひとつ頼みごとをされたんだ」
「頼みごと?」
「うん。姉ちゃんを東京に戻してもらえるように説得してくれませんか、って」
私は言葉を失った。
里沙がそんなことを2人に頼んでいったなんて気づきもしなかった。
確かに2日目は別行動を取ることも多かったけれど、彼女が啓さんたちにコッソリ話しに行ったなんて。
「元はと言えば、俺のせいなんだわ。里沙ちゃんが元気なさそうだったから、何か出来ることがあれば協力するよ〜なんて軽いノリで言っちゃったからさ」
政さんは私がショックを受けているのは分かった上で、話を続けた。
「親の心子知らずって言うけど、深雪ちゃんはまさにその状態なんだって。なんでも好きなようにやれって言うご両親でも、さすがに北海道の、しかも札幌みたいな中心部でもない場所で娘が働くのは心配みたいだよ」
その話は、妹から聞いたことと同じ内容。
それを啓さんと政さんに話してしまったのか。
そんな話をされて、2人はどう思っただろう。
私が黙ったままなので、政さんはさらに言葉を続ける。
「今までここで働いてた人ってさ、ほとんど道内の人間ばかりなんだわ。だからそういう家族の寂しいっていう感覚は、俺は持ち合わせてなかった。たぶん、啓も。里沙ちゃんがいなくなったあと、啓は反省してた。深雪ちゃんの家族のことまで考えてやれてなかったな、って」