お願いだから、つかまえて
訥々とした喋り方のままで、佐々木くんは冗談を挟んで笑わせてくる。私の話に大笑いするようなことはなくても、必ず言葉で反応してくれる。
おまけに、伏し目がちなので、私は存分に彼の顔を見放題…ーー待って、佐々木くんがあまり目を合わせてくれないのって、私にあまりにも見られ過ぎて、困ってるから?
はっと思い当たって、今までの佐々木くんの様子をざっと思い起こしてみたら、誰に対しても同じような振る舞いだったので、密かに胸を撫で下ろす。
ああ、顔がタイプってものすごい破壊力なんだわ。知らなかった。
この顔で迫られたら、私、きっと拒めない。そうしたら、浮気確定。
だからそんなことにならないように、性的な空気を匂わせる行為や言動は慎まないといけないのだ。
…いや、元々そんなことはできないからモテないわけだし、結局、何もかもが一人相撲なんだけど。わかってるんだけど。
佐々木くんは、今はそれなりに楽しんでくれていたとしても、ここを出たら、私のことなんかすっかり忘れるんだろうなあ。
いや、いいのよ。それが正しい。
いや、でもやっぱりちょっと寂しい。
いやいやいやいや…
全くもって生産性も現実味もないことを考えていたら、自分が思っていたよりぼんやりしてしまっていたのか、
テーブルの上に置いていたスマホが震え出したことに、おかしいくらいビクッと肩を震わせてしまった。