お願いだから、つかまえて
私たちはマグカップを返却台に下げて、カフェを出た。
「本当に、今日はありがとうございました。」
「いえいえ。」
カフェの前で頭を下げて上げると、カフェの隣の簡易的な本屋の宣伝のポスターが目に入った。
「…あ、じゃあ私、ちょっとだけそこの本屋に寄っていくので。」
私の視線に釣られて佐々木くんが背後の本屋を振り返って、
「あ…、ちょっと、僕も。」
「…もしかして。」
「その新刊、ですか?」
「そう! 完結ですよね!」
本屋で宣伝していたのは、SFとファンタジーが融合した小説の、壮大な三部作の、三作目に当たる新刊の発売だった。
「面白いですよねえ、これ。こんなデカデカと宣伝してるってことは結構需要あるんだ。私の周りにこんなの読んでる人いなかったから知らなかった。」
わかりやすい所に平積みされているそれをそれぞれ手に取って、レジに向かう。
「結構マニアックだとは思いますけどねえ。でもこの作家はまあまあ有名なので。」
「そうなんですか? 私これしか知らないから…」
「うちに結構揃ってますよ。」
「ほんとですか? 失礼ながら昨日本棚の本はざっと見ちゃったんですけど、見つけられなかったです。」
「あれスライド式の本棚で、後ろにまだ詰まってるんですよ。」
「えーっびっくり…」
見たい。ていうか貸してほしい! とは…言っちゃいけない。これ以上距離を自ら詰めにいってどうするの。