お願いだから、つかまえて
しばらく相談して、ソーセージとカラスミのパスタと、もちろんビール…と言ったら、ビールも色々あるんですよ、と佐々木くんが教えてくれたので、おすすめだというものを注文した。
「あ、読みました? あれ。」
ビールがすぐに来たので、乾杯をしたら、珍しく佐々木くんから振ってくれた。ということは、よっぽどこの話がしたかったんだろう、と思って、少し大袈裟に食いついてみた。
「読みましたよー! もー、不覚にも泣きそうでしたよ、私。」
佐々木くんの顔がちょっとだけ楽しそうにほころんだ。私、この人の表情読み取るの、得意になってきたな。
「感動しますよねえ、あれは…」
「佐々木くんも感動とかするんですねえ。」
「…あんたたち、そんな仲良かったの?」
香苗がぽかんとした顔をしている。
仲、良さそうなんだ、私達。
「結構話が合うので…」
佐々木くんがぼそりとそう返している。
あ、話が合うっていう認識で、大丈夫だったんだ。
「へえー」
香苗は頷いているけれど、納得がいっていない。
この、ダブルデートみたいな、ともすれば私と佐々木くんをくっつけようとでもいうような顔ぶれを揃えたのも、香苗にしてみれば全くそんな気はなかったのは明らかだ。
香苗にとって、佐々木くんは恋愛対象のゾーンには全く引っかかりもしない男の人で、当然私にとってもそうだと信じ込んでいる。
だから、なんの心配もないと思って、修吾のことを知っていても、こうして誘ってくれたわけで。
今の一瞬で、香苗が少し疑問を持ったのが、すぐにわかった。
うーん。でも、何もないよ。
私は香苗と目を合わせた。香苗も私の言わんとしていることを読み取って、軽く頷く。
ほんと、長い付き合いって、お互い何でもすぐに伝わる。