お願いだから、つかまえて
「…順調そうだね? 二人は。」
既に若夫婦みたいな空気感の香苗と山園さんを見て言うと、香苗は、わかる〜? と嬉しそうに言った。
山園さんもいつものそつない笑顔とは、また違う…そう、私を見る時の修吾みたいな顔をして笑った。
「一ヶ月、くらい? だっけ、付き合い始めて。」
「そうだね。」
「私、まだ経緯を聞いてないんだけど。佐々木くんの家から帰る時に付き合うことになったんだよね?」
「え? そうなんですか?」
佐々木くんが顔を上げる。
この人はたぶん、二人のことをなーんにも察していなかったんだろう、な…
こういう話は、香苗と二人の時にしたほうかいいのかな。と思いつつも好奇心に負けて聞くと、意外にも山園さんも積極的に話してくれた。
「帰り道に、たまたま二人になったから、このチャンスを逃したら駄目だと思って、僕から結婚を前提に付き合って欲しいってお願いしたんだ。」
「へえ〜〜」
付き合いたてで幸せいっぱいなんだろうな。ついつい話したくなっちゃうんだろうな。いいなあ…
「この年になってこんなに人を好きになるなんて思ってなかったから、ちょっと戸惑ったところもあるけど。付き合ってみてやっぱり香苗でよかったって思うよ。」
「…へえー…」
佐々木くん。佐々木くん、反応しようよ! 興味ゼロって態度やめようよ! 私一人でこの幸せを受け止めろって言うのか! いや、私が振った話だけどさあ…
「…この年でって、山園さん、何歳ですか?」
「30。」
「え、童顔ですね。」
佐々木くん! そこはスルーでいいんだよ!
「よく言われるんだ。気にしてるんだけどね。」
山園さんが寛容な人で私はほっとする。