お願いだから、つかまえて
「でも、山園さん、素敵なのに、30まで独身なんて、香苗のほうこそ、ラッキーだったよ。出逢えてよかったね。」
と言ってから、ああなるほど、修吾もそういう目で見られているのか、と思い当たった。
見た目もよくて、勤め先も申し分なくて、もう30で、結婚していない。ラッキー、と思われる人材なんだ。
「実は、婚約までいってた人がいたんだ。でも、結局うまくいかなくて…」
山園さん、そんなことまでぶっちゃけなくていいよ…と思ったら、香苗もなんてことなさそうに頷いている。
ああ、この件については既にもう、よく話し合ったんだな。
お互いの信頼感が伝わってきた。
「拓哉くんのお家がね、かなり格式高いところなんだって。それで元婚約者さんと、お家がうまくいかなかったみたいで。」
「は、はあ…」
ということは。
本当にこのまま結婚までいったら、香苗は、玉の輿…
さ、さすがだ。
香苗は学生時代、絶対に玉の輿に乗るんだと息まいていた。結局仕事が面白くなって、キャリアを積んでいるうちに、年をとって、そういうことは言わなくなっていったけど。
うーん、これは、本当に決まるかも。
よくよく知っている香苗のしたたかさを、また目の当たりにした気分だった。
「理紗もさ、」
香苗がパスタを山園さんに取り分けながら言う。
「もうすぐ誕生日でしょ。」
「え、そうなんですか?」
佐々木くんの反応のしどころには、もう突っ込むのはよそう。
「もう29になりますー」
「じゃあ僕と一緒ですね。」
「来るかもよ? 誕生日プロポーズ。」
「…うーん…」
どうかなあ。
修吾の忙しそうな姿を思い返して唸る。
「しばらくないかなあ。」