お願いだから、つかまえて

それはすぐに既読になり、

『大丈夫か?』

と返信が来た。

『大丈夫! 月曜は会社行けるから』

そう打って送ったところで。

「矢田さんより、怜士くんのほうが好きだわ〜。理紗、怜士くんとお付き合いしなさいよ。」

…どこまでわかっているんだか、お祖母ちゃんがのんびりした声でそんなことを言った。
というか、怜士くんて。

「…なんで?」

修吾も何回かここに来たことがあるけれど、どう考えたって修吾のほうがきちんとしてた。
洋服も、愛想も、受け答えも。

「なんとなく。心を開いてくれてる感じがするじゃないー? 自然体でねえ。しっくりくるじゃない。」

そ、そうか?
心を開いている態度なのか? あれは。
まあ、佐々木くんが自然体なのは間違いないだろうけど。
修吾は自分が人に威圧感を与えがちなことを知っているから、お祖母ちゃんと話す時は、仕事モードのスイッチが入って、確かに営業トークっぽくはなる。
でもそれって大人として当然のことなんじゃないの?
佐々木くんのほうが、ちょっと普通じゃない。人の目を気にしなさすぎる。
そもそも彼女の祖母に対する態度と、よくわらからないけど…女友達…? の祖母に対する態度は違って当たり前だし。

まあ、なんでもいいけど…
とりあえず明日は修吾と会うことは回避できた。
会社では仕事があるし、私も変な態度にはならずにすむはず。
問題は来週末か…

私は重い重いため息をつき、足を引きずるようにして自分の部屋に戻ると、一晩ぶりに自分のベッドに倒れ込み、泥のように眠りこけた。
< 55 / 194 >

この作品をシェア

pagetop