お願いだから、つかまえて


何があったって、翌日には会社で顔を合わせる。

身体を引き摺るようにして家に帰ると、もちろん香苗からラインが入っていた。

『ちょっと、大丈夫なの? 何かあったの? 片付けのことは佐々木くんがスタッフばりにやってくれたから全然問題ないよ、気にしないで! とにかく連絡してよ』

私はそれを読んで、何故だかもの凄く安堵して、部屋でやっと人目を気にせず泣いた。
涙目のまま返信して、とにかく週末に会うことを約束した。

それから、もう一人、佐々木くんからもラインが来ていた。一度抱き合って以来、個人的に連絡が来たのはこれが初めてだった。

『迂闊なことをしてすみません。大丈夫でしたか?』

これは、返信に悩んだけれど、とりあえず何も問題ないから、何も気にしないでと返した。
たぶん信じてもらえないだろうし、気にしているだろうけれど、そう言う以外にはどうしようもなかった。

とにかく、週末になれば、香苗に会える。
さすがにもうこれまでのことを話さないわけにいかないだろう。
それでも、土曜日の約束だけを支えに、私は笑顔で仕事に向かうことができた。

どちらかというと、修吾のほうが、態度はぎくしゃくしていて。
友理奈ちゃんからは何かありましたかと聞かれたし、長戸さんには探るような目を向けられた。

そんな中、人事から呼び出しがあった。
用件は察しがついていた。
正社員になるかどうかの面接だ。時期的にも間違いない。

修吾が推してくれたのに、こんなことになって。
私は正社員になりたいと、言っていいんだろうか?
でもまだ、なってくれと言われたわけじゃないし、こんなことを修吾に聞くのは気がひけた。

色恋のことで仕事が左右されるなんて、会社にとってはいい迷惑だけど、私がここまで来られたのはどう考えたって修吾のお陰だ。
修吾が嫌だと言うなら、やめるべきかもしれない、とも思う。
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