僕らが守るから
空煌兄さんの話

理由

「お邪魔します」

普段、俺様な
油島さんが敬語とか……ぷぷ。

貴重なところを見られましたね。

『徹也、今、こいつが
敬語とか、ぷぷって
思っただろう(笑)』

油島さんを指して
兄さんは僕に訊ねました。

バレてしまいましたね。

『兄さんの言う通りです(笑)』

一緒に暮らし始めて
一ヶ月ですが、兄さんの
言いたいことなどが
なんとなくわかるようになりました。

「お前ら本当の兄弟みたいだな」

そんな話しをしていたら
いつの間にか家に到着です。

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

『どうぞお上がり下さい』

二人を兄さんの部屋へ案内し、
僕はお母さんとお茶の用意をしました。

「私達は向こうにいるわね」

お茶を運び終わると
お母さんが言いました。

「で、何で今まで連絡しなかった」

空煌兄さんは中々
話そうとしません。

友人だからこそ
言い難いのかもしれません。

親に棄てられたなんて……

『兄さん、大丈夫です。
僕もお母さんもお父さんもいますから』

“怖い”のでしょう。

お二人なら大丈夫と
思っていても拒絶や同情の
言葉や眼差しを
言われたり向けられたりされるのを。

『俺の話しを聞いてほしい』

深呼吸をした後
兄さんは二人を見て言いました。

「「わかった」」

返事を聞いて
此処一ヶ月のことを
ゆっくりと話し出しました。

✦実父に棄てられたこと

✦学校を無理矢理退学させられたこと

✦どしゃ降りの公園にいたこと

✦僕が見つけて家へ連れて来たこと

✦秋鹿家の養子になること

✦二人には知られたくなかったこと……

誰も話そうとしません。

お二人も何を言えばよいのか
分からないのだと思います。

まさか、
此処まで深刻な話だとは
予想していなかったに違いありません。

このまま続きそうな
沈黙を破ったのは油島さんでした。

なんと油島さんは兄さんの
後頭部を
バシッと叩いたのです❢❢

「俺達が同情なんかすると思ってんのか」

呆れた口調で言いました。

「俺達はお前に同情するほど
いい子じゃないことをわかってるだろう」

油島さんに続いて
西名さんまで呆れた口調で言いました。

そうでした(苦笑)

この二人の性格を忘れてましたね……

誰かを同情するような性格ではないですね(笑)

それが友人であっても。

『そうだったな(苦笑)』

それを聞いて兄さんがやっと笑いました。

『よかったですね』

僕も自然と笑みがこぼれました。
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