恋のお試し期間
「こんなに待ったのに?」
「体洗ってからでないと」
「あ。えっちな事想像してる?今日はしないから安心していいよ。
出張帰りのお疲れな女性に迫るって俺としてはどうかと思うし」
「慶吾さん」
「ただ君と会いたかっただけ。…君に触れたかっただけ」
「だ、だからまだだめ」
「キスも駄目?」
「だめ」
「分かりました。我慢します」
彼氏とのえっちを回避できて安心する自分もどうかと思うけれど。
佐伯は宣言通り一緒にお風呂に入りキスだけで終わってくれた。
抱きしめてはくるけれどそれ以上特に触れてくる事はない。
寂しいと思うのかもしれないが里真はすごく満足している。
「痛い痛い痛い!慶吾さん痛い!」
「えぇ?ちょっと押しただけだよ?」
「絶対力入れてる!痛い痛い!」
「里真。たまにはエステとかマッサージ受けてみたら?」
「…そうですね」
風呂から上がり食事も終えてリラックスのはずが悶絶する里真。
ソファに座って寛いでいる里真の足を揉む佐伯は苦笑。
「リンパマッサージとか受けたら里真号泣しそうだ」
「友達がやってました。すっごい痛いけど効果はあるみたいですね」
「何度かやっていけば徐々に痛くなくなるらしいけどね。俺も詳しくはないんだ。
でもお客さんでエステティシャンとかマッサージ師さんとか居るから今度紹介してあげようか。
皆独立してやってる人でね。中々予約が取れないって有名な人もいるみたい」
「凄いですね。そんな人と知り合いなんだ」
「知り合いというか。お客様だからね。話はするし、顔も覚える」
「慶吾さんかっこいいから」
里真に進めてくるくらいだから多分女性。そして女性客が多いお店。
仕事柄何かと女性と知り合う機会は多い。
何より彼はモテる。
つい忘れがちだが何時彼に新しい彼女が出来てもおかしくない。
何も恥ずかしがらず彼を困らせない美女なんてごろごろ居そう。
「関係ないと思うけど。まあ、里真がかっこいいと思ってくれてるなら俺は嬉しい」
「誰が見ても思いますって」
「他人とかどうでもいいんじゃない。俺ってそういうのほんと興味ないんだよね」
「そうなんですか」
「君が俺をどう思ってるのかはすごく気になるけどさ。で?どう思ってるのかな」
「どうって。…彼氏、です。けど」
それ以上に何を言えばいいか分からずきょとんとしている里真。
どう思っているかなんて真面目な顔で聞かれても困る。
「もしさ、…もし、だけど。義理とか雰囲気で付き合ってくれているのなら。
そこはハッキリ言ってくれていいから。それで怒ったりはしないからさ」
「……慶吾さん」